七曲バス停の謎?

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七曲バス停とは

長野電鉄バス(長電バス)の路線のうち、飯綱町と信濃町を国道18号経由で結ぶ路線があり、その途中に七曲(ななまがり)バス停はあります。

注)上の画像にある通り、現在の路線図上では「七曲り」と「り」が付いた表記ですが、これ以外では「七曲」と表記されていることが多く、また現地のバス停も「七曲」となっているので、「七曲」の表記でいきたいと思います。

筆者が子供だった昭和後半、たまにバスで信濃町に行くことがあり、この路線を使いました。バスでこのバス停の前を通るたび、当然ですが「ななまがり」のアナウンスを耳にしました。「ななまがり」という名前は、当時テレビでやっていたドラマ「太陽にほえろ!」の舞台である七曲署(ななまがりしょ)と同じなのが印象にありました。

ところで、「七回曲がる」って意味ですよね?

「七曲署」はドラマ内での架空の警察署ですが1、このバス停は実在の場所であり、「九十九折」のように、7つのカーブで坂を上る道の意味だと考えたくなります。あと、かつてのバスも「バスが揺れますのでお気をつけください」のようなアナウンスがあった気もします。(注: ちょっと記憶があやふやです)

ところが… このバス路線は私が知る限り、今も昔も整備された国道18号を通り、七曲のバス停の付近はほぼ真っ直ぐな坂になっています。仮に「七」の数字がカーブの多さ、ひいては坂のキツさを「盛った」表現だったとしてもせめて「四」曲がりぐらいはあって欲しいですが、実質「ゼロ」曲がりではないか。そんなことを子供の頃には思ったものでした。

ほぼまっすぐ(バス停より先で緩やかに曲がるけど)
七曲バス停の前を通る国道18号。右端真ん中辺にバス停の標識が写る

地図を見直してみると

地図を拡大してよく見てみると… バス停付近に、何だか不思議なカーブをもった細い道があります。あれ、もしやこれが旧道(国道18号が整備される以前の道)ですか?

ただ、この道の付近は割と平らになっていて、付近に大きめの施設があったりします。かつて坂を沢山のカーブで曲がりながら上った道とするには、「迫力」が足りない気もします。

そもそもこの道、始点と終点は今の国道と一致するのですから、最初から国道のような真っ直ぐな道にできなかったのかな、という気もしてしまいます。

時間をさかのぼってみよう

もちろんタイムマシンはないですが、古い地図や航空写真を確認することができます。では早速、昭和40年の航空写真です。少し地名を入れてみましたが、現在のどのあたりかわかりますでしょうか。

昭和40年の航空写真

七曲のバス停の近くの、見覚えのある道が見えますね。では拡大してみましょう。

昭和40年の航空写真(拡大)

元の道が国道18号に分断された跡ですか? ちなみに国道18号に沿った部分は白く見えていて、国道が建設されたばかりって感じですかね?

とにかく、昭和40年ではまっすぐな国道ができてしまっているので、もっとさかのぼる必要があります。それは可能なのか? はい、米軍によって終戦後に撮影されたものがあるのです。というわけで以下は昭和27年の航空写真です(写真の範囲は上の昭和40年の写真とほぼ同じです):

昭和27年の航空写真

あ、これは見つけたんじゃないですかね? 写真の左下部分の道路です。拡大してみましょう。

昭和27年の航空写真(拡大)

確かにこれはグネグネ。「七曲がり」の名にふさわしいと言えるでしょう。ちなみにカーブの数ですが

このように数えれば確かに「七曲」です。やっぱり本当だったんですね!

なぜ七曲がりする必要があったのか?

これで七曲が存在したことはめでたく確認できましたが、現道だと真っ直ぐ行けるのに何故こんなグネグネ曲がらなければいけなかったのか、という疑問が残ります。というわけでまだ道がまっすぐでなかった頃の地図(地形図)を見てみます。

昭和27年の地図(戦前の地図の修正版で、まだ横書きの文字が右→左なのに注意)

どうも七曲のところはぽこっと斜面が急になっていたようです。昔の国道を地図の右上の辺から山際に沿って左の方に進んでいくと、現在の七曲の辺で急に傾斜がきつくなったことでしょう。かと言ってこの山を越えていかなければ北側の信濃町の方へは行けません。なのでこの部分を回り込むように越えていた、それが七曲だったのではないでしょうか。

今の国道は急坂をどう克服した?

昔のように地形なりに進んでいたのではどうしてもこの急坂部に当たってしまいます。なので、今の国道は現代の土木力を活かし、この急坂のもっと手前から盛り土をして、平均的な勾配でこの部分を越えるような道にしたのではないでしょうか。現在の国道の登坂車線の部分です。地形どおりだと短い距離で高さを稼がねばならないから急坂になるわけで、もっと手前から少しずつ高さを稼いでいくイメージです。

それに加えて、元の七曲の道の方も盛り土で国道18号と高さを合わせてあって(そうしないと盛り土後の国道と接続することができない)、その結果元々の道より平らに近くなっているのかも。上に書いたように現在の旧七曲に相当する道(上のストリートビュー)がほとんど平らに見えるのはそのせいではないでしょうか。

  1. といっても実際には七曲署という名前のもとになった曲がった道あるようです ↩︎

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